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クライアント役になって気づいた、ヒアリングで制作側にしてほしいこと

お客様からWeb制作の依頼があって最初に行うもの、それがヒアリングです。サイトを作る目的や背景をお伺いし、ワイヤーフレームやデザインに落とし込むための要件や仕様を決定します。

私の所属しているGEKKO GUILD(とグループのQrious)では定期的に勉強会を行っています。ヒアリングについての理解を深めるため、講師がWeb制作会社役、私がクライアント役になって、ヒアリングの場面を再現するロープレ会が開かれました。

<設定>
個人事業主の私が、自身のポートフォリオサイトを制作したいと制作会社に依頼した。サイト内でやりたいことはなんとなく決めているが、金額の相場がわからないので予算は相談したい。

このロープレでは自らクライアント役になることで、ヒアリングのやり方によってクライアントがどう感じるかを身を持って体験することが一つの目的でもありました。

ヒアリングシート自体は悪ではないけれど

ヒアリングシートとは、制作における必要な項目が列挙してあり、それにチェックを入れていくシートです。
「ヒアリングシート テンプレート」などで検索すればたくさん出てきます。(例えばこんなもの

まずロープレでは、以下のやりとりのようなイメージでヒアリングシートに記載してある内容を質問されました。(※割と極端にやっています)

「ホームページに掲載したい内容はありますか?」

「えっ…?!(はっきり決まってないんだけど…)」

うーん…自己紹介と、事業内容と、お問い合わせフォーム、あと情報発信のためにブログ、あたりですかね

「かしこまりました(納得した様子)」

(…ん?これで決定でいいの?)

そんな調子で、ヒアリングシートどおり打ち合わせされた私の感想はこちら。

・終始質問攻めにされている感じ
・AとBどちらがいいですかと言われたけど…どっちがいいのかよくわからないからお任せしちゃっていいのかなぁ?
・回答したとおりのことはしてくれるっぽいけど、こちらの目的が伝わっているのか不安だな…大丈夫かな(あまり話せなくて、消化不良感)
・こちらの要望に対して予算内でできるとは言われたけれど、他に何か必要なコンテンツとか、そういうのは無いのかな?

これは悪い例として、試しに講師の方がやっていただいたものです。
ヒアリングシートは悪ではありませんし、むしろ制作に入るにあたっての項目の抜け漏れが無いかの確認には非常に有用です。
ですが、それをそのまま、尋ね方も工夫せず使ってしまうと、クライアント側はロープレの私のように感じてしまうなと思ったのです。

今までの自分のヒアリングを振り返ってみると、確かに「シートの内容を聞いておかねば!」と詰問しているようになっていました。

選択するにも判断基準が必要

ではなぜクライアントが質問攻め感、消化不良感を感じてしまうのか?

大抵のクライアントはWeb制作に対して初心者です。相場感、つけたい機能とその難易度、かかる期間。私達が初めて注文住宅を作るときのようにぼんやりとしたイメージが多いのが大半でしょう。いくらお金をかければどの程度の性能、機能、広さを持った家が建つのか、あらかじめわかっている人はほとんどいないはずです。

AにするかBにするかを選択するにも、それが適切かどうかの判断基準が必要です。

デザインの希望はAがいいけど、ブランディングとして合っているのか
やりたいことを実現するのに、サイト内のコンテンツは足りているのか
ターゲットユーザーは決まっているけれど、そのユーザーに刺さるようなサイト構成、デザインになっているのか
事業の課題を認識しているけれど、それが果たしてホームページ制作によって解決できるのか

わからなくて曖昧な部分が多いから、より深い知見を持っている制作会社に相談したのです。
※もしくはすでにはっきり決まっていたとしても、その決定がプロ視点から見ると間違っている可能性もあります。
ヒアリングシート上の項目だけを尋ねられても、判断基準が無いから選べないし答えに困るでしょう。答えに困っているのにどんどん質問されるから、詰問っぽさを感じるのだと推察します。

我々制作側がプロとしてすべきは、

クライアントに選択してもらうための材料を提供・提案すること

クライアントからの「機能Cをつけたい」という要望に対して、「わかりました」とヒアリングシートにチェックを入れるのではなく、

  • なぜその機能Cが必要なのか(目的・背景)
  • 機能Cは今必要なのか(導入時期の妥当性や優先度)
  • 機能Cの代わりになるようなプラットフォームや手段は無いのか(機能Cでなければいけない理由)
  • 機能Cを導入するメリット・デメリットは何か
  • 予算と納期との兼ね合いはどうか

などについて一緒に考え、クライアントに判断基準を提供→合意形成を図るのがヒアリングの場です。

判断基準を提供できるようになるために

ヒアリングの場において、制作側には選択基準を示してほしいということは私も身を持って理解しました。
じゃあ、そうできるようになるにはどうすればよいのでしょう。

先ほどの機能Cの例でいくと、

  • 機能自体の実装方法、その難易度を理解している
  • 機能C単体のメリット、デメリットを説明できる
  • 似たような手段と比較して違いを説明できる

などといった知識が必然的に必要になってきます。
さまざまなジャンルのサイトのコンテンツに対してそれが説明できるのがベストではありますが、そうそうすぐ身に着けられるものでもありません。

私はまずは、いろんなサイトの構成を知ることが必要だと思っています。
ECサイト、コーポレートサイト、ポートフォリオサイト、メディアサイト…どれも構成している内容や、動線、デザインなどが全然違います。

ECサイトのときはだいたいどういう項目がナビに配置されている、とか
採用の強化を目的としているサイトは、どういう方法で訴求をしているのか、とか
いかにそういった視点からサイトを見られるかが、引き出しの多さ、ひいては提案力につながってくると思います。

また、先述したヒアリングシートの項目はあらかじめ頭に入れておき、それを自然な対話の中で埋めていくための流れの組み立てもスキルの一つでしょう。

私もまだまだ経験が浅く、ヒアリングの難しさに打ちのめされることもあります。(クライアントさんもいろんなタイプがいますしね…)
これを機に提案力を磨いて、あとから「こうじゃなかった!」とデザイン・仕様変更をする羽目にならないようなヒアリングを目指していきたいです。

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